日ごろ、土の調査をし、論文を書くことを生業(なりわい)としている。子供の頃、民放のバラエティ番組、ゲーム、漫画を見ることを親に許されなかった私には、今でも週刊誌を開くことに背徳感がある。そこにエッセイを書くとなれば、なおさらだ。勇気を振り絞ってコンビニで誌面をのぞくと、刺激的なスクープ写真や記事、グラビア写真、著名人のエッセイの数々。土の研究者には畑違い、否、場違いと言わざるをえない。

 ただ、成功例も耳にした。成人向けセクシー動画サイトの中に数学の解説動画を投稿した結果、意外にも視聴率が高かったというのだ。ユーザーが箸休め(?)の時間(賢者タイムと言うらしい)に視聴するという。柳の下に“どじょう”が2匹いるのか定かではないが、読者の中にも地味な話題を求めるニーズ、新たな嗜好・文化を生み出す“土壌”があるかもしれない。

 文春砲にもセクシー動画サイトにも、私の論文よりも多くの人々を引き付ける何かが存在する。この正体は何か。週刊誌の魅力は、速報性と読者の欲望への即効性だ。今、多くの人を引き付ける刺激的な話題が求められる。これに対して、私と近い関心を持つ研究者の出現は百年後かもしれない。自動的に「百年に一人の逸材」となる人物を待ちながら、今しか通じない用語、人名は避け、百年後も再現可能な表現を選ぶ。私の話が眠たくなる理由だ。だが、言い訳を重ねているようにしか聞こえない。

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source : 週刊文春 2026年8月27日号