わずか28年で生涯を閉じた安田種雄さんの父・南永さんは、言葉を噛みしめるように語った。

 

「事件直後は彼が犯人だと思い込んでいましたから、長い間、恨みを募らせてきました。ただ今回、新たに判明した事実もある。20年経ったとはいえ、証言してくれたことは率直にありがたいと思っています」

「週刊文春」は2号続けて、木原誠二元官房副長官の妻・Ⅹ子さんの元夫である種雄さんが怪死した事件を報じた。

「週刊文春」に民事訴訟を提起した木原氏

 まず、前々号では重要参考人Y氏の告白を掲載した。種雄さんが亡くなった2006年4月9日夜、親密な間柄だったX子さんから電話を受け「種雄君を刺しちゃった」と告げられたと証言。自宅に到着したY氏は、凶器となったナイフの柄に巻かれた両面テープを持ち去るなど、証拠を隠滅したと明かした。

 結局、種雄さんは自殺とされたが、警察は18年10月の再捜査でX子さんの実家を家宅捜索。すでに木原氏と再婚していたⅩ子さんも取り調べを受けたが、関与を否定し、10月下旬に聴取は幕を閉じた。結果、警察内部で浮上したのは、木原氏の政治権力が、X子さんの捜査に影響を与えたのではないかとする疑念だった。

 前号では、警察の再捜査でも入手できなかった新証拠を明らかにした。種雄さんの死後、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたY氏に対して、X子さんが送った80通超の手紙と、Y氏が綴った「獄中ノート」だ。彼はこう書き記していた。

〈何も殺すことはないだろうと思いたくなる様な動機で、種雄も殺されてしまった〉

 種雄さんの長姉が語る。

「彼女を守るために事件を隠蔽したことは、正直、許せない感情はあります。でも、真相を話してくれたことは感謝していますし、『獄中ノート』に記された葛藤や贖罪の気持ちを読んで、『心ある人なんだ』とホッとしたことも事実です」

 だが、遺族はX子さんが手紙に記した内容について憤りを感じている。

 種雄さんの死後、銀座のホステスとして働いていたX子さんが、木原氏と出会ったのは08年初夏のこと。同年8月、彼女は〈種雄くんのお墓にいくことで再出発できたら…と思います〉と手紙に書き綴った。

 長姉ら遺族は一様に「“再出発”とは、どういうことかと怒りが湧きました」と唇を震わせたが、それも無理からぬこと。真相は解明されておらず、遺族の時計の針はこの20年、止まっていたからだ。

 父の南永さんは、事件発覚の数時間後、警視庁大塚署の担当警部が発した一言を鮮明に覚えている。

安田種雄さんの父・南永さん

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source : 週刊文春 2026年9月3日号