【前回までのあらすじ】これは事実に基づいた物語である。父・日下秀一、母・亜弓のもとに生まれた耀。耀が秀一の実子ではないことが発覚し、両親は離婚した。秀一は瀬里と再婚。火災により亜弓は死亡した。耀が秀一の家に「お試し泊」をした大晦日の夜、火事に見舞われる。この事故により姉の紗香は頭に火傷を負い、瀬里は死産する。秀一は新居を購入することに決めた。
*
火災直後はそれどころではなかったが、時間が経つにつれ、当時の状況が少しずつわかってきた。秀一が積極的に警察や消防から情報を得ようとした成果でもある。
火災が起きたとき、三人はリビングでうたた寝をしていた。三人の証言によれば、火災報知機の音で目が覚めたときには、キッチンは炎に包まれていた。玄関まで到達できそうに思えず、ベランダに逃げようとした。ベランダにはハッチ式避難はしごがあったが、瀬里はそれより先に、隣家との境にある「蹴破り戸」と呼ばれるものを思い出した。いざというとき、蹴破って隣家のベランダに逃げる仕切りの板だ。
「あそこを破ってお隣に逃げましょう」
そう言って子供たちを誘導しようとしたとき、ベランダに面したガラスが割れた。一気に熱風と黒煙、そして炎が噴き出した。三人が負った外傷はこのときのものと思われる。
瀬里はとっさに二人に覆いかぶさる格好になった。子供たちは顔を伏せたため熱風を吸わずに済み、瀬里は吸ってしまった。
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source : 週刊文春 2026年9月24日・10月1日号
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