【前回までのあらすじ】これは事実に基づいた物語である。父・日下秀一、母・亜弓のもとに生まれた耀。耀が秀一の実子ではないことが発覚し両親は離婚、秀一は瀬里と再婚した。火災により亜弓は死亡。秀一の家でも火事が起き、耀は桑原家の養子になるが、結局秀一が引き取る。秀一は探偵に耀の調査を依頼した。姉の紗香は耀に「火事はあなたが起こしたのだろう」と詰め寄った。
いやあとんでもない悪童ですよ。そんなふうな報告が来るのを予測していたのですが、結果は予想外でした。幼稚園時代に、同じ組の子が何人か「転園」というのでしょうか、ほかへ去っていったことがあったようです。その後はあまり事件や事故にかかわっていません。むしろ、アパートが火事になって母親が焼死したことと、代沢のマンション火災などは、彼の歴史においても特異なできごとだったようです。ただ、これは偶然なのか、という疑念は残ります。
さすがに、大晦日に我が家で起きた火事は事故だろう、耀がいたのは偶然だろうと考えました。どちらも消防や警察が調査していますからね。だったら、感情を除けば、耀を再び籍に入れることに問題はないのではないか。亜弓に対する印象が悪すぎて、耀まで偏見のフィルター越しに見ていたのではないか。どのみち民法上「親子の縁」が切れないのなら、手元においたほうが気が休まるのではないか。
そう考えた次第です。――いえ、やはり正直に言います。金に、3000万円という金額に負けたのです。すでにお話ししましたように、当時投資に失敗してさらに親に泣きつくか、瀬里にフルで働いてもらうか、生活を思い切りきりつめるか、そんな状態でした。その中には、紗香の公立学校への転校も含まれていました。
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source : 週刊文春 2026年11月12日号
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