人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
僕が学園祭の舞台に立つと決めたのは、ヒロのせいもある。ヒロにカッコ良くギターを弾いて歌ってるところを見て欲しかったから。ヒロは愛称で、本当は広子と言った。偶然だけど僕と同じ、高校2年生で、隣の県に住んでる。でも、互いの顔すら知らないのは、ペンフレンドだったからである。
“いつか会いたいね”で盛り上り、電話番号まで書き合ったこともあったが、長い間、それが実現しなかったのは僕のキャラ設定に少々、偽りがあったから。
“バイクの免停食らった”とか“タバコを教師に見つかった”とか、考えつく不良の要素を得意気に書き添えていたのだ。
ちなみに実際、バイクは持っていたがそれはキャラ設定のナナハンじゃなく、あくまで原付だった。
でも、ヒロは毎回「ダメじゃない! 本来の優しいジュンに戻ってね」などと、まるでオカンが言いそうなことを書いて寄こしてくれる。
ギターでたくさんオリジナル曲を作っていたのは本当だけど、手紙に書いてるようなロックバンドをやっていたわけじゃない。ひ弱なクラスメイトとフォーク・デュオを組んで、初めて人前で演奏することになったのだ。
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source : 週刊文春 2021年8月26日号