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デルタのウソと本当《綾瀬はるか入院は上級国民だから?》《交差接種は安全?》《中高年より若者接種でいいの?》《防衛大感染対策は防衛力ゼロ?》

「週刊文春」編集部
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感染が判明した綾瀬
感染が判明した綾瀬

 目まぐるしく変化する感染状況、続々と生まれる変異株……日々、新たな情報がもたらされる一方、首を傾げざるを得ない怪情報も飛び交う。あなたは“ウソと本当”を見抜けますか?

〈綾瀬はるかさん、コロナに感染し入院〉

 8月31日夜、国民的女優の感染を知らせるニュースが突如飛び込んできた。

 折しも東京都では重症病床使用率が100%に達し、多くの入院希望者が自宅療養を強いられていた。所属事務所が〈肺炎症状で入院〉と発表すると、ネット上は〈中等症でも入院できるんですね〉〈上級国民だからか〉と批判的な声で溢れた。

 昭和大学病院の相良博典院長は、「災害レベル」の都内の窮状をこう訴える。

「感染者はピークアウトしたように見えますが、病床に余裕はありません。ECMO対応できない他院の重症患者さんの受け入れ対応に追われ、人手も足りない」

 このような状況で“VIP待遇”は可能なのか。

「いまの東京で、特別扱いでの入院は不可能です」

 池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師は断言する。

「コロナは指定感染症の2類相当。治療は公費負担で行われ、お金を積めば入れる病気ではない。私の周りでも第五波の最中、著名な大学病院の名誉教授のご家族が感染しましたが、入院できませんでした。病床に偶然空きが出なければ、どんな人でも入れない」

 映画関係者が明かす。

「綾瀬さんは当初、『入院できない人もたくさんいる。意外と元気だし』と入院を拒んでいた。ただ症状は重く、医師と所属事務所・ホリプロの説得で順天堂大学病院に入院したのです」

 順天堂大学病院は入院の判断基準をこう答えた。

「酸素吸入が必要な中等症Ⅱ以上を目安としておりますが、急激な病状の進行や悪化、再燃を見た場合は、これに関わらず入院の判断をしております」

 ホリプロは7月に職域接種を行っていたが、綾瀬は未接種だった。

「副反応による発熱でも撮影がストップするため、一部の俳優は接種が進められませんでした」(ホリプロ)

 現在、綾瀬は退院し、自宅療養中だという。

 ブレークスルー感染が増え、死亡例も出る中、8月29日、河野太郎ワクチン担当相はブースター接種に言及。併せて接種の加速化のため、ファイザー製やモデルナ製の「mRNAワクチン」と、アストラゼネカ製の「ウイルスベクターワクチン」という、異なる種類を打つ“交差接種”について、厚労省に検討を指示していることも明らかにした。

アストラゼネカ製ワクチン
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 だがその翌日、加藤勝信官房長官が会見で交差接種について、「有効性、安全性に関するデータは十分に得られていない」と述べ、河野発言を否定したのだ。

 一体、どちらが正しいのか。鹿児島大学大学院・西順一郎教授が解説する。

「ファイザー製とアストラゼネカ製の交差接種について、英研究チームが6月に実施した治験結果では、安全性に問題がないと報告されています。今後、3回目接種が検討されていく中で、国産のアストラゼネカ製を活用していくことは、理にかなっていると思います」

 アストラゼネカ製を2回打つより、ファイザー製と組み合わせた方が、効果が高いという報告もある。またカナダやスペイン、韓国では交差接種を承認している。東北大学の児玉栄一教授も続ける。

「ワクチンの歴史で、交差接種により有害事象が起こった報告はありません。例えばインフルエンザのワクチンは、毎年違う種類を打っていますが、問題はない」

 第五波に突入した7月、小池百合子都知事は、

「陽性者数も入院患者数も高齢者層から50代に移ってきている。まさに“50代問題”」

 と、警鐘を鳴らした。高齢者の8割以上が接種を完了し、50代がハイリスク層となった現状を分析し「50代へのワクチン接種を集中的に進める」と“中高年ファースト”を標榜したのだ。ところが――。

 渋谷に16~39歳の若者ワクチン接種センターを開設。自衛隊の大規模接種センターでも、若者向けの優先接種を開始したのだ。

大人気の若者ワクチン接種センター

「本来は、若者より重症化リスクの高い中高年を優先すべきでしょう」

 こう首を傾げるのが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの小野昌弘准教授だ。

「ワクチン接種の目的は、重症化の回避が第一。デルタ株では大多数が接種しても、集団免疫が難しいことが分かっています」

 イギリスは成人の約7割が2回接種を終えているが、「若者もとにかく打て」という風潮ではないという。

「高齢者や基礎疾患保有者への優先接種をひと通り終えた段階では、若者より重症化リスクの高い40~50代の中高年層に接種を優先すべきです」(同前)

 未接種の中高年には徹底した自己防衛が求められる。

 一方、国防の中枢を担う場では事件が勃発していた。

〈助けて下さい……〉

 9月に入り、防衛大学校生からSOSが小誌に次々寄せられた。一体、何が起こっているのか。現役学生のA君が訴える。

「約2000人の学生が寝食を共にする全寮制の学内で、夏季休暇中に約30名の感染者が出ましたが、大学は帰省中の学生に着校(帰校)を命じました。その後も連日のように感染者が続出し、現在では陽性者と濃厚接触者合わせて200名ほどが、学生寮とは別の施設で隔離生活を送っています」

 8月からの累計感染者数は115名。同じく現役学生のB君が続ける。

「隔離者には、仕切りも冷房もない部屋で雑魚寝を強いられる人もいて、劣悪な環境です。隔離者への食事の運搬は、マスクを着けただけの1年生が担当。その中で、濃厚接触者以外からも陽性者が続出した。全校に外出禁止令が敷かれ、先の見えない軟禁生活と感染の恐怖に絶望しています」

隔離場所の環境は劣悪

 ところが、9月2日の本部会議では、対面授業の再開と、水泳競技会やパレードの実施も決定された。

防衛大からのメール

 コロナへの“防御力ゼロ”の実態に、愛知県立大学の清水宣明教授は驚く。

「ウイルスを含むエアロゾルが滞留した隔離施設に、マスクだけの学生が飛び込めば、少ない呼吸数でも感染する可能性はある。そしてウイルスを外部に運ぶことになり、感染は広がる。帰省していた学生を呼び戻したのも信じられません」

 防衛大の回答。

「食事を運搬する学生は陽性者等と接触することはないため防護服等は着用させていません。競技会やパレードは検査で陰性の者のみが参加する。学生は特別職の国家公務員であり、隔離対策をした上での着校は必然のものと考えています」

 最後に、“ウソのような本当の話”が明らかとなったのだった。

source : 週刊文春 2021年9月16日号

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