小山田氏との「約束の日」
小糠雨の降る寒い夏の午後だった。
9月某日。約束の場所に時間ちょうどに現れたその男は、大きく深呼吸をした後、取材陣に軽く一瞥をくれ、私の対面のソファーに腰をかけた。よほど緊張していたのだろう。唇は乾いていて震えていた。
「小山田です」
その第一声はか細く沈んでいて、とても「渋谷系の王子様」と呼ばれていた頃の勢いはなかった。小山田圭吾氏(52)。ソロユニット「コーネリアス」として活動するミュージシャンである。
この日、私は小山田氏に2時間にわたるインタビューを行った。その内容は、「週刊文春」9月23日号(電子版は15日配信)に掲載された。
あらかじめ断っておくが、実は私は「コーネリアス」というアーティストにも「渋谷系」と呼ばれる音楽ジャンルにも全く興味がなかった。その私がなぜ小山田圭吾氏にインタビューしようと思ったのか。それは、小山田氏をめぐる騒動がSNSで拡散していく過程に「違和感」を覚えたからである。
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source : 週刊文春