※連載第1回(「コーネリアス」にも「渋谷系」にも興味がない私が小山田圭吾にインタビューした理由)から読む
狙った人物に会える時の高揚感
かつて「トップ屋」と呼ばれたスクープ記者でなくとも、取材をして書くことを生業にしている者であれば、世間を騒がせた渦中の人物に自分だけが接触できた時の高揚感は言葉にできないものがある。無論、その時点では「狩り」は成功していない。それでも、自分が狙った人物に会えると分かった時の胸の高鳴りは言葉にならないものがある。
小山田圭吾氏と会えると分かった時、まさにその心境だった。
本来、小山田氏側からすると、どこの馬の骨かも分からないフリーライターには絶対に会いたくはない心境だったはずだ。「何を書かれるか分からない」という計り知れない恐怖があったに違いない。
しかし、水と油のように混じり合うことのない両者が、何の因果か思惑が一致し、希に惹かれあう場合がある。渦中の人物が「本当のことを話したい」という差し迫った状況に追い込まれた時だが、そんな「幸運」は滅多にめぐってこない。しかし、たとえその確率が1000回に1回だろうが、ダメ元でコンタクトをとり続ける根気がなければフリーライターの仕事は成立しないのだ。
無論、相手の言い分をそのまま掲載するようなことはない。取材者として難しいのは、「利用される」というリスクもあるということだ。小山田氏に対する私の興味は、「なぜ自ら障がい者イジメを告白し、二十数年後にその事実を否定したか」である。だから、申し訳ないが、私が小山田氏に会うモチベーションは最初から最後まで「小山田君の汚名をそそぎたい」というコーネリアスファンの心理とは全く別物だった。
後から本人から聞いたのだが、この騒動が起こった後、複数の週刊誌を含むメディアが自宅に押しかけ、一時はホテルを転々としていた時期もあったという。
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source : 週刊文春