「ワクチンを接種するのはやめた」
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領(66)が10月12日、こう発言した。これまでは新型コロナのワクチンを最後の1人になるまで接種しないと主張。事実上接種を拒否していたが、より決意を固くした格好だ。
彼のワクチンへの拒否感は強く、数々のトラブルを起こしてきた。参加にはワクチン接種が義務だった9月の国連総会で登壇を強行し、同行者に感染者を出す騒ぎになった。未接種を理由にサッカー観戦を断られた際は、「なぜワクチンパスポートが必要なんだ」と逆ギレ。製薬会社が契約に副反応に責任を負わないと記しているため、副反応で「もしワニに変身したとしても自分の責任になる」と、不信感を表したこともある。以来、同国では「ワニになる」が大統領を揶揄する言葉として大流行した。
ワクチン以外のコロナ対策も軽視。コロナは「ちょっとした風邪」で、マスク着用やロックダウンに反対し、独自にロックダウンを行った自治体のトップを「独裁者だ」と批判した。
多くの国民は大統領の発言をよそにワクチンを接種し、2回目接種を終えた人口は約47%に達した。ただ依然として感染は抑えられておらず、10月15日の感染者は約1万5000人、死者は約500人。累計死者数は60万人を突破し、アメリカに次ぐ世界第2位となってしまった。
ボルソナロ氏は「死者がいない国はあるか?」と居直るが、国民の不満は高まる一方だ。失業率は14%と高く、コロナ禍で貧困層が3倍になるなど、経済政策への批判の声も大きい。
陸軍軍人だったボルソナロ氏は、1988年に市議会議員に当選し、以来、国家保守主義を強く支持。過激な発言で“ブラジルのトランプ”の異名を持ち、2018年の大統領選で勝利した。だが、今年9月17日時点の支持率は22%と低空飛行。10月には“全国ボルソナロ追放運動”が全国84都市で行われた。
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source : 週刊文春 2021年10月28日号