「電磁波攻撃やめろ」狙われた新居浜親子3人の悲劇

「週刊文春」編集部
ニュース 社会

 交錯するいくつもの赤色灯が、闇に溶け始めた一軒家を不穏に照らし出していた。10月13日夕刻。主の岩田友義さん(80)は玄関先でうずくまり、妻のアイ子さん(80)と三男の健一さん(51)は、屋内の廊下に倒れていた。

「駆けつけた時には3人とも心肺停止の状態。胸部付近を複数回、深く突かれており、犯人の躊躇いが全く感じられなかった」(捜査関係者)

 四国三大祭りの「太鼓祭り」で有名な愛媛県東予地方の新居浜市。市の中央を流れる国領川は、穏やかな瀬戸内の海に注ぐ。その河川敷に、シルバーの軽ワゴンで車中泊を続ける不気味な男がいた。車内には、布団、蚊取り線香、地元の求人誌……。後に岩田さん一家を刃渡り13センチのナイフで惨殺し、逮捕される河野智(こうのさとる)容疑者(54)である。

送検の際は俯いて車に乗り込んだ

「岩田(健一さん)から電磁波攻撃を受けとる。会いに行って話つけたる」

 事件の1カ月弱前、河野からそんな連絡を受けた男性は「馬鹿げたことを言うなよ」と旧友をいさめた。だが、河野は直後の9月23日、岩田さん宅に押しかけ、警察沙汰を起こす。その日、健一さんは不在。警察に通報し、河野を追い払ったのが、友義さんとアイ子さんの老夫婦だったのだ。

「河野と健一さんは元職場の同僚。河野は『電磁波を当てられる』、『盗撮される』などと健一さんに一方的な恨みを募らせ、さらに両親も標的に加えたとみられています」(社会部記者)

 不条理な妄念を増幅させた末、3人の命を数分足らずで奪い去った河野。逮捕時は住所不定だったが、元は新居浜市内の小中学校を卒業した地元の人間だった。

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source : 週刊文春 2021年10月28日号

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