衆議院総選挙も終わりましたが、今回の選挙でも政治指導者のコミュニケーション能力が問われました。菅義偉前総理は、コロナ禍で緊急事態宣言を出すたびに国民に協力を呼びかけましたが、そのメッセージが心に響かないと不評で、結局は退陣へとつながりました。では、岸田文雄総理はどうなのかと注目されたというわけです。
今回、10月22日に北海道各地で行った岸田総理の演説を分析することで、「心に響く演説」とはどういうものかを見ていきます。
まず岸田総理の特徴は、他党を批判しないこと。安倍晋三元総理は、総理時代、民主党と、その後の立憲民主党について口を極めて罵っていました。それはいまも変わらず、今回の選挙でも立憲民主党や共産党の非難を続けていました。
ところが岸田総理は、自分の内閣が何をやろうとしているのかを力説するだけで、他党については、ほとんど触れていませんでした。他者を批判しない。これが、岸田総理を知る人たちが、「岸田さんは人格者だ」と評価する所以です。
ただ、他党を批判しないことに安倍元総理は不満らしく、終盤になって「野党を批判しろ」との指令が飛んだという情報がありますが、岸田総理は、「どの政党が、どの候補者が、しっかりとした外交安全保障を進めることができるのか、これもしっかり見ていただかなければなりません」という程度。いい人ですね。
岸田総理の演説のもうひとつの特徴は、「しっかり」というのが口癖であることです。旭川市内での10分弱の演説でも、「しっかり」という言葉が36回も発せられました。たとえば、次のように。
「皆さんの暮らし、そして仕事を守るための経済対策、大型の経済対策をしっかりと用意させていただきます。皆さんのお仕事を守るために、持続化給付金並みの支援、あるいは雇用調整助成金の特例。こうしたものも、来年の3月にしっかりと見通せる支援を用意いたします。また困っている方々には、しっかりとこの現金の給付を用意すると。こうした大型の経済対策をしっかり用意しながら、先ほど申し上げましたワクチンの接種と、検査体制の充実。そして治療薬の実用化を目指す、こういった取り決めをしっかり進めていきたいと思っています」
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source : 週刊文春 2021年11月11日号