発表が11月12日だったから、いささか旧聞に属する話だが、東芝が2023年度に会社を3分割することを決めた。「『総合電機』解体へ」(朝日)「東芝3分割を発表」(読売)。各紙とも会社の形に焦点を当て、傘下に収まるさまざまな事業の価値の単純合計よりも、会社全体の価値が低く見られる「コングロマリット・ディスカウント」の解消が狙いなどと書いたが、どうしてこうも上っ面を撫でるのか。

「国策民営」という言葉がある。電力会社の枕詞に使われることが多いが、筆者は原子力発電所のプラントを製造する東芝も国策民営会社の一つで、それゆえ監督官庁である経済産業省べったりの会社だと考えている。

 その東芝に異変が起きたのは2015年に発覚した不正会計だった。資本不足に陥った同社は2017年に約6000億円の増資を実施。これを「物言う株主」と呼ばれるアクティビストが引き受け、約3割の株式を保有した。結果、東芝は経産省だけでなくアクティビストの顔色も窺わなければならなくなった。

 昨年から今年にかけて東芝で起きたのは経産省とアクティビストのガチンコ勝負だ。経産省の力を借りて昨年の株主総会を乗り切ろうとしたが、これにアクティビストが反発。前社長は会社の非公開化でうるさ型を排除しようとしたが、返り討ちに遭った。

 勢いづいたアクティビストは経産省と浅からぬ縁があった取締役会議長の再任を否決。執行部が捻り出した再建計画にダメ出しを繰り返し、分割に持ち込んだ。3分割は投資に対するリターンを極大化するもので、アクティビストが「東芝劇場」で勝利の雄叫びをあげたというのが事の本質だろう。

 それを朝日は経営者の暴走が解体を招いたと分析し、毎日は経団連会長を輩出した名門企業が解体されるとノスタルジックなことを書いた。日経はたまたま米ゼネラル・エレクトリックやジョンソン・エンド・ジョンソンが同じタイミングで会社分割を発表したことと結びつけ、それが世界的な潮流であるかのような記事を載せている。

 どの記事もパペットである東芝が主人公で、パペット・マスターにはほとんど触れていない。記事に奥行きがないから「新聞離れ」は進む。

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source : 週刊文春 2021年12月2日号