かつて毎日新聞で皇室取材を担当、現在は成城大学文芸学部教授の森暢平(ようへい)氏(57)は、小誌を含む週刊誌の小室さん報道を厳しく批判し続けてきた。
私は、『サンデー毎日』の連載「社会学的皇室ウォッチング!」で、小室眞子さん・圭さん夫妻をリベラリズムの立場から擁護する論陣を張っている。小室さんバッシングを続けてきた『週刊文春』から、私への執筆依頼には戸惑いを覚える。一方、保守というものは寛容をその旨とするはずだから、保守を自認する『週刊文春』ならではの余裕だとも感じるので、依頼を引き受けることにした。
文春報道のいくつかには言いたいことがある。例えば、2019年2月28日号の〈真贋鑑定 小室圭さん「コイン詐欺」と「宮内庁なりすまし写真」〉と題する記事である。眞子さま(当時)は13年、英国エディンバラ大学での留学を終え、約1カ月の欧州旅行をした。
その際、小室さんが宮内庁職員になりすまして同行していたという噂を検証した記事である。小室さんが帰国する際、羽田空港で撮ったとされる写真がネット上にあり、左襟に着いたバッジが宮内庁の記章ではないかとネット上で騒ぎになっていた。
文春は、この写真は、東京ビッグサイトの就職活動セミナー参加中のものだと突き止めた。バッジが大きさやデザインから宮内庁記章でないことも指摘した。つまり、噂を完全に打ち消す記事である。
文春のタイトルは、小室さんが「宮内庁職員なりすまし」という疑惑があることをネタに「真贋鑑定する」というスタンスである。しかし、疑惑を否定するタイトルを立てるのではなく、小室さんの周囲にはさまざまな疑惑があり、そのひとつであることを想起させる曖昧さを残す。週刊誌記事のタイトルは新聞広告となり多くの人の目に触れる。疑惑と事実とを混同する人が出現してしまう。
現にいまだにネット上では「欧州旅行同行疑惑」「なりすまし疑惑」の新たな書き込みが続き、本当のことだと信じている人が少なくない。
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source : 週刊文春 2021年12月2日号