ヤクルトの山田哲人内野手(29)は、過小評価されがちな選手である。

 理由の一つは山田が、非常に高いレベルの「中途半端」な選手だ、ということにあるかもしれない。

複数回のトリプルスリー達成はプロ野球史上初

 2年連続を含む3度のトリプルスリー達成はまさに偉業だ。しかし15年に同時達成したソフトバンクの柳田悠岐外野手(33)に比べてインパクトがないのは、柳田がホームラン打者で、大谷翔平クラスの圧倒的な飛距離を誇るからだ。一方の山田は、基本は中距離打者。しかも本塁打王となればチームメイトに村上宗隆内野手という本命クラスの選手がいる。かといってシーズン200安打を打つ訳でもなく、50盗塁する訳でもない。

 とにかく長打力も正確性もスピードも、いずれもトップクラスの選手なのだが、頭抜けたトップではない。そこが、山田がスーパースターになりきれない、皮肉な理由なのだろう。

 国内フリーエージェントの権利を取得した昨オフ、本人は「勝てるチームでプレーしたい」という欲求もあり、真剣に移籍を模索していた。一時は巨人が獲得に動くというウワサが実しやかに流れ、本人もその気になっていた時期もあったようだ。ところが実際にはそんな動きは全くなく、本人がある巨人OBに「僕を奪ってくれないんですか?」と“直訴”したという話を聞いたこともあった。

 結果的には悩んだ末に、ヤクルトと年俸5億円プラス出来高で7年契約を結んで残留を決断した。そうして迎えた今季は、東京五輪の日本代表で念願の金メダルを獲得。志願してキャプテンに就任したヤクルトでも2年連続最下位から下克上のリーグ優勝を果たし、一気に日本一まで駆け上がる原動力の一人となった。

 その山田が契約更改で並々ならぬ意欲を見せたのが、4度目のトリプルスリーと共に、守備の名手に贈られる「ゴールデン・グラブ賞」の獲得だったのである。

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source : 週刊文春 2021年12月23日号