週刊文春 電子版

無味乾燥の有り合わせ記事

新聞不信

「週刊文春」編集部
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 毎日新聞の1月13日付朝刊三面に、「オミクロン 社会活動に影」と「共生探る英 南アは減少」という記事が載っていた。前者には記事の最後に4人の記者の署名があるため、これがどのようにして作られたかがおおよそ分かる。

 おそらく、編集をすることになったデスクが現場に「記者会見や取材で聞いたオミクロン関連の話をメモにして出して」と号令をかけた。すると記者が「医療提供体制の逼迫が生じないように、社会活動が停滞しないように柔軟に変化させるべきだ」という日本医師会会長の発言や、「科学的見地からコロナ対策を打ってほしい」といった経団連会長の言い草をメモで出した。

 デスクは出てきたメモを見比べながら記事のストーリーを考えるが、自分は取材をしていないから尖ったことを書くわけにもいかない。その結果、「感染対策と社会経済活動の両立が重要」という、毒にも薬にもならないストーリーに辿り着く。その後、天井を向いて文章を考え、メモの中からストーリーに合う部分を切り取ってはめ込み、完成させたという流れだろう。有り合わせのもので作る“サプライサイド記事”は本当にやめた方が良い。

 世界には日本よりも早くオミクロン株の新規感染者数が急速に増えた国がある。筆者はこの分野の素人だが、日本は結局のところ、そうした国が辿った道を後追いするのではないかと思っている。だから世界で最初にオミクロン株が報告された南アフリカの状況に関心がある。

 毎日の二つ目の記事は、その南アについて触れていて、「1日当たりの新規感染者数は昨年12月中旬に急増したが、その後は減少に転じており、最近はピーク時の半分以下の水準になっている」と報告。どうして減少したのか。記事はこう続く。「減少した明確な理由は不明だが、専門家からは『6〜8割程度の人が既にコロナに感染し、免疫を付けた』との見方が出ている」

 腹落ちしない書きぶりではある。しかしそういう情報があるのなら、日本医師会会長や感染症の専門家につまらないことを言わせっぱなしにするのではなく、記者が「オミクロンは集団免疫を獲得するまでピークアウトしないのか」と聞き、その返事を書いた方がまだためになる。

source : 週刊文春 2022年1月27日号

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