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校名隠して商魂隠さず

新聞不信

「週刊文春」編集部
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 やるせない事件である。受験生や保護者、学校現場の動揺はいかばかりであろうか。

 大学入学共通テスト初日の15日朝、東京大学の門前で受験生ら3人が刺されて重軽傷を負った。殺人未遂容疑で逮捕されたのは、国公立大学医学部の合格者数で全国ランク1位の私立東海高校(名古屋市)2年生の少年だった。

 と書いたが、高校名は新聞各紙では伏せられている。毎日が当日午後配信した記事でも「名古屋市に住む私立高校2年の少年」とある。特定すると高校に非難が集中して動揺を助長しかねないと考えたのかもしれないが、その割に記事の中身は無遠慮である。

 毎日のその記事も、早々と警視庁少年事件課から得た情報として「医者になるために東大を目指して勉強を続けていたが、1年くらい前から成績が上がらず、自信をなくしていた」といった少年の「供述」を載せている。

 翌16日、東海高校がコメントを出したから隠すも隠さないもないと思うが、毎日は校名は伏せたまま全文を紹介して「『コロナ禍で生徒が分断』 東大前3人刺傷、少年が通う高校コメント」との見出しの記事を配信した。

 生の情報を伝える必要はあると思うが、冷静な議論を促す視点を欠いたまま剥き出しの「言葉」を垂れ流すと、動揺は広がるばかりだろう。

 産経も18日朝刊で、少年が「(学校での)面談で『東大は無理』という話になって心が折れた」と話したと報じた。この話が独り歩きすると、教師は面談で本当のことは言えなくなると思わないのか。

 それにしても、ホラーかと思ったのは、朝日の17日朝刊である。社会面に「テスト2日目 各地で警戒」との記事がありつつ、国際面の下に週刊誌「アエラ」が載せた広告は、まさかのトップ記事を堂々とこう謳う。

「理系好きを育てる 佐藤ママ 3男1女が東大理Ⅲ×柳沢幸雄 7割理系の開成前校長」。どうやら「公式は暗記しない」「つまずいたら2学年前の問題集に戻る」など受験術を教える対談らしい。

「週刊朝日」や「サンデー毎日」が東大を筆頭に高校別大学合格者ランキングの特集を売り物にして来たのは、ご承知の通り。校名隠して「東大理Ⅲ神話」を煽る商魂隠さずとはこれいかに。

source : 週刊文春 2022年2月3日号

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