僕が最後に中国に行ったのは、今から4年ほど前のことになる。

 この時に訪中した目的はビジネスではなく、理事長を務めている東京フィルハーモニーの公演が上海で催されたからだった。日中国交正常化の45周年を記念したコンサートで、上海交響楽団音楽庁でチャイコフスキーの「交響曲第5番」などを聴いたのをよく覚えている。

 楽天グループと中国の関係と言えば、昨年3月、IT企業・テンセント(騰訊)からの出資を受けたことに対し、経済安全保障上の問題があるのではないか、と指摘を受けたこともあった。しかし、これは誤解も甚だしい。あくまでテンセントの投資子会社からの資金であり、彼らはテスラなどアメリカの企業にも同じように投資している。楽天の経営への影響が生じるようなことにはなり得ない。キャピタルゲインを狙った純投資だ。楽天の株価は割安だからチャンスだと判断したのだろう。

 そもそも僕は、一党独裁という中国の国家体制に違和感があるし、ビジネス面でも基本的に距離を置いている。最後に中国での事業を考えたのも、今から10年前のことだ。

 当時、僕らは楽天市場での経験を活かし、中国国内で、アリババ(阿里巴巴)に対抗できるマーケットプレイスを作ろうと考えていた。パートナーに選んだのは、検索エンジンとして成長著しかったバイドゥ(百度)で、彼らとのジョイントベンチャーを設立したのだ。

“中国のGoogle”とも呼ばれるバイドゥ(百度)

 起業家の視点から見ると、中国というマーケットには二つの魅力があった。

 一つ目は言うまでもなく、14億人もの人口だ。情報のフラット化というインターネットの革新性が、これほどまでダイナミックな形で広がっている場所は他になかった。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題
コメント機能も使えます

週刊文春電子版に超おトクな3年プラン59,400円が登場!月額プラン36ヵ月分と比べて19,800円、年額プラン3年分と比べて6,600円おトク!期間限定12月2日(月)まで!

キャンペーン終了まで

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

  • 3年プラン

    59,400円一括払い、3年更新

    1,650円/月

    オススメ!期間限定

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2022年2月17日号