バイドゥとの合弁事業は難しかった|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第31回

三木谷 浩史
ビジネス 社会 経済 国際 企業

 僕が最後に中国に行ったのは、今から4年ほど前のことになる。

 この時に訪中した目的はビジネスではなく、理事長を務めている東京フィルハーモニーの公演が上海で催されたからだった。日中国交正常化の45周年を記念したコンサートで、上海交響楽団音楽庁でチャイコフスキーの「交響曲第5番」などを聴いたのをよく覚えている。

 楽天グループと中国の関係と言えば、昨年3月、IT企業・テンセント(騰訊)からの出資を受けたことに対し、経済安全保障上の問題があるのではないか、と指摘を受けたこともあった。しかし、これは誤解も甚だしい。あくまでテンセントの投資子会社からの資金であり、彼らはテスラなどアメリカの企業にも同じように投資している。楽天の経営への影響が生じるようなことにはなり得ない。キャピタルゲインを狙った純投資だ。楽天の株価は割安だからチャンスだと判断したのだろう。

 そもそも僕は、一党独裁という中国の国家体制に違和感があるし、ビジネス面でも基本的に距離を置いている。最後に中国での事業を考えたのも、今から10年前のことだ。

 当時、僕らは楽天市場での経験を活かし、中国国内で、アリババ(阿里巴巴)に対抗できるマーケットプレイスを作ろうと考えていた。パートナーに選んだのは、検索エンジンとして成長著しかったバイドゥ(百度)で、彼らとのジョイントベンチャーを設立したのだ。

“中国のGoogle”とも呼ばれるバイドゥ(百度)

 起業家の視点から見ると、中国というマーケットには二つの魅力があった。

 一つ目は言うまでもなく、14億人もの人口だ。情報のフラット化というインターネットの革新性が、これほどまでダイナミックな形で広がっている場所は他になかった。

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source : 週刊文春 2022年2月17日号

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