2月4日にいよいよ北京での冬季オリンピックが開幕する。そこで今号からは、僕の考える中国という国について書いてみたい。
一党独裁体制の中国ではこの2年間、新型コロナの流行を時に凄まじいほどの行動制限で押さえつけようとしてきた。けれど、そうした強制的な「ゼロコロナ対策」を以てしても、今年に入ってから感染者数が増え始めているのが実情だ。オリンピックの舞台となるはずの北京でも、相次いでオミクロン株の感染者が確認されたと報じられている。
自国の科学技術力をアピールしようと、中国製のシノバックワクチンの投与にこだわったことも影響しているのだろう。シノバックワクチンはファイザーやモデルナのワクチンに比べ、効果が劣っているとも言われており、幾らゼロコロナ対策を取っても、ウイルスが拡散する隙を与えている。
中国政府はおそらく、強権的なやり方で感染を抑え込んででも、北京オリンピックを大々的に有観客で開催したかったに違いない。無観客だった昨年の東京オリンピックを念頭に、観衆が会場に詰め掛けている光景を世界中に見せつけ、「中国がコロナに打ち勝った証」と声高に主張したかったはずだ。
そうした国威発揚のためのオリンピックという点では、1936年のベルリン大会を彷彿とさせる。ヒトラーは自身の権力を世界中に見せつけるために、大々的なプロパガンダの場として大会を位置付けた。同じような狙いが習近平国家主席にもあったのだろう。しかし、重症化率は格段に低いとはいえ、オミクロン株の流行で、そうした国威発揚の目論見は完全に崩れ去ったと言える。
一党独裁の“強味”
そもそも新型コロナの流行が無かったとしても、北京でのオリンピック開催には問題があまりに多い。特にウイグル自治区での少数民族への人権侵害は深刻だ。また、真相はよく分からないものの、中国の女性テニス選手が一時的に安否不明となった出来事にも、眉を顰めたくなる不透明さが残っている。バッハ会長と習近平の親密ぶりからしても、IOCと中国の関係には裏があるように感じられ、「スポーツの祭典」を心から楽しもうという気持ちにはどうしてもなれない。
一方で、その中国という共産主義の大国が今後も経済的な発展を続けていくのか否かは、隣国である日本にとっては切っても切り離せない問題だ。
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source : 週刊文春 2022年2月10日号