日曜日の夕方は「サザエさん」が定番で、大人になった今もついチャンネルを合わせてしまう。それゆえ、つい東芝報道に関心が向くが、事態をこう理解している。
東芝は一昨年の株主総会を監督官庁と二人三脚で乗り切った。しかし手法に強い不満を持ったアクティビストが昨年の株主総会で大暴れした。その攻め口が巧妙だったこともあって東芝は防戦に追い込まれ、新たな経営計画を作らなければならなくなった。
昨年11月に発表したグループ三分割案は防戦の産物だったが、アクティビストは納得しない。そこで計画を二分割に変え、子会社売却で配当金を増やすので許して欲しいと言い出したのが直近だ。
「東芝劇場」の主役は言うまでもなく東芝。そこには経済産業省という演出家がいるが、足元ではアクティビストというスポンサーの発言力が強く、演技にダメ出しが続いていると捉えるとわかりやすい。
しかし新聞各紙は役者ばかりに目を向けるので、三分割案が二分割案に変わると、「迷走」と書く。劇場は役者と演出家、スポンサーが作り出すもの。三者の力関係が分かっていれば、表現は変わるはずだ。
役者だけで劇場が作られていると勘違いしているのが日経。昨年11月の三分割案を特ダネとして報じられたことがよほど嬉しかったのか、「日本の大企業が会社を完全に分割し、上場する初の事例となる」「(分割は)日本の産業界において歴史的な転換点となる」と書いた。
主役の持ち上げ方は異常と言わざるを得ない。同時期に米ゼネラル・エレクトリックが会社三分割を発表したことを引き合いに出し「まさに脱炭素時代の『グレート・リセット(大再起動)』が始まっている」と書き、社説では「東芝は3社分割を着実に実行し成長を」とエールを送った。
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source : 週刊文春 2022年2月24日号