やんごとなき辺りの話になると、令和の時代でさえ、筆はこうも鈍るものなのか。

 秋篠宮家の長男悠仁さまが昨春、「第12回子どもノンフィクション文学賞」で佳作を受賞した作文に他の著作物と酷似する記述があったことが発覚した問題である。

 これが広く世間の知るところとなったのは、「デイリー新潮」が16日にネット配信した「独自」記事だった。ところが、各紙の翌17日朝刊は、宮内庁の「発表」をそのまま垂れ流す代物だ。しかも記事のイロハのイである「発覚の端緒」をこぞってぼやかしているのが面妖である。

 日経は「外部から」の「指摘」があり「悠仁さまが確認された」と書き、「悠仁さまの作文 文献記載に不備 宮内庁」と見出しを立てる。読売も、「外部」の「指摘」と悠仁さまの「確認」という言葉使いは同じだ。

 毎日は同じ「指摘」でも「週刊誌」からのものとし、悠仁さまが「感謝しているという」と書く。「感謝」の件は産経のデジタル版にもある。

 発覚の端緒を巡って、まがりなりにも朝日は「週刊誌などが報じていた」と書いていた。だが、宮内庁の発表に至る経緯になると、これまた「同庁によると」とした上で「雑誌関係者」から「指摘」があって云々と続く。

「外部」「週刊誌」「雑誌関係者」などと、端緒を作った当事者の正体をなぜ曖昧にするのか、理解に苦しむ。それでなくとも、同日の各紙朝刊には「『悠仁さま』入選作文に指摘された“悲しき『盗用』疑惑”検証」と大書きされた当の「週刊新潮」の広告が掲載されているのだ。

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source : 週刊文春 2022年3月3日号