関西人にとって空気のような番組、それが『水野真紀の魔法のレストラン』。

『パネルクイズ アタック25』も『ためしてガッテン』も終わる、けれど終わらない『魔法のレストラン』。もう20年続いてます。超人気とか話題沸騰とか、そういう番組ではない。やってることすら忘れるぐらいテレビの中に馴染んでいる。打ち切るという会議をするのも忘れているのでは……というぐらいとにかく関西でこの番組は「空気」。しかし、人間空気がなかったら死にますからね。あらゆる番組が「いかに打ち切られず長く続けられるか」必死になる中、この番組の不死身ぶりはすごい。

 内容は想像通りのグルメバラエティで、大阪の街のうまいものを紹介して「うわーすげー」「うまそー」とスタジオで騒ぎ、うまいもの対決! というテイで東京のうまいものを取り上げつつちょっと突っこんで落として笑う(けどそこがかえって東京への複雑な憧れを感じる)とか、マンネリこそ正義、と言いたいぐらいのありきたりな内容です。よく夕方ワイド番組にある、芸人が食べ歩くロケ&スタジオでワイワイやるグルメコーナー、あれをゴールデンで1時間番組にしたら『魔法のレストラン』。

 こういう番組って、もう完全に「テレビ局が目をつぶってても手癖でチャッチャと作っちゃえる」ような番組だと思ったりしますが、私が住んでるところの地方局やケーブルテレビの同じような番組を見るとあからさまにしょぼくていたたまれなくなるので、「空気のような番組になる」のもそれなりの能力も金も要るんだろうなあと思う。

 そんな、空気番組『魔法のレストラン』の中で「ふしぎだ……」と思わされるのは、タイトルにもなっている水野真紀です。

水野真紀 ©文藝春秋

 水野真紀だからガーガーと司会をするわけもなく、主にワイプの四角の中で、おっとりと「まあ」「あらー」なんて顔(やけにライトが当てられて白い顔)で驚いたり笑ったりしてるだけなんです。いや調理コーナーでエプロンつけて出てきますが、『魔法のレストラン』が空気のような番組であるように、水野真紀は『魔法のレストラン』の中で空気のような存在。邪魔なことはしないし、空気がないと人は死ぬとはいえ、他の空気を取り入れてもいいのでは……とふと思う。この番組は水野真紀でなくてはいけない何があるのか。

 これは夫が国会議員であるということも、何か影響をおよぼしているのかなと思い、先日の衆院選で水野真紀の夫の後藤田正純が私のいる選挙区で立候補したから注視していたら落選して「え! これは『魔法のレストラン』にも何かが起こるか」と身を乗り出したものの比例で復活当選してしまった。なのでその点についてはまだわかりません。

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source : 週刊文春 2022年3月24日号