プーチンを宗教から分析する|池上彰

池上彰のそこからですか!? 第519回

池上 彰
ニュース 社会 国際

「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」

 美しい言葉です。ただし、これがロシアのプーチン大統領の口から発せられたと知ると、どうでしょうか。これは『新約聖書』の「ヨハネによる福音書」の中の言葉です(第15章13節)。

 この言葉が発せられたのは、3月18日のこと。モスクワのスタジアムで開かれた集会での演説です。

 この集会は、ロシアによるクリミア半島併合8周年を記念するイベントでした。数万人以上の人々がロシア国旗を振って祝いました。

 映像には熱狂した若者が映っていましたが、実際には公務員が動員されたり、大学生たちが授業に出なくていいからコンサートに参加しろと言われてきたら違う集会だったりなどという証言が出ています。

 それにしても8周年という中途半端な時期の大集会とは、どういうことか。これは、当初は「ウクライナ解放」を記念する集会として計画されていたものではないかという見方が出ています。ロシア軍がウクライナに侵攻したのは2月24日。プーチン大統領は、ロシア軍が電撃的に首都キエフを攻め落とせば、ウクライナは数日で降伏すると安易に考えていたと言われます。それが実現すれば、8周年を記念しつつの大集会になったはずだというわけです。

 聖書からの引用は、どうして出てきたのか。これはウクライナで戦っているロシア軍兵士に対する言葉でした。つまり、ロシア兵が「命を捨てる」ような状態に陥っていることを暗に認めてしまっているのです。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2022年4月7日号

無料ニュースレター登録はこちら

今すぐ登録する≫

新規登録は「初月300円」から

今すぐ登録する≫