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ウクライナで過去にもあった悲劇|池上彰

池上彰のそこからですか!? 第521回

池上 彰
ニュース 社会 国際

 ウクライナのキーウ近郊でのロシア軍による民間人虐殺のニュースには、耳を疑います。映像は直視できません。ロシアは、「ウクライナの一般人には危害を加えていない」と言い続けてきました。一般のアパートをミサイル攻撃などで破壊しながら、よく言うよと思っていましたが、ここまで来ると、意図的な虐殺としか言いようがありません。

 あまりの悲惨さに言葉もありませんが、ウクライナはソ連時代にも悲惨な経験をしています。それが大飢饉です。今回は、そんな歴史を振り返ってみましょう。

 ウクライナの国旗はお馴染みになりましたね。上半分の青は青空を、下半分の黄色は小麦畑を象徴しています。それだけ肥沃な大地を持ち、「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれています。そんな豊かなウクライナで1932年から33年にかけて大飢饉が起きたのです。これを現在のウクライナでは「ホロドモール」(飢饉による殺人)と呼んでいます。飢饉による死者は、少なくとも250万人以上。350万人とも500万人とも言われています。ソ連が長年にわたって、この事実を隠してきたことで、正確な数がわからないのです。

 では、「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれたウクライナで、なぜ悲劇が起きたのか。理由は二つ。ひとつは、独裁者スターリンによる農業集団化で、もうひとつは外貨獲得のための食料徴発でした。

 スターリンにとって、農民は“困った存在”でした。教条的な社会主義理論によれば、階級闘争とは、労働者(プロレタリアート)と資本家(ブルジョワジー)との戦いです。資本家は資本(生産手段)を持っていますが、労働者は自らの労働力しか持っていません。社会主義革命は、資本家から生産手段を取り上げ、労働者のものにすることです。そんな考えから、ロシア革命によって政権を掌握すると、ソ連共産党は資本家を一掃します(要は処刑です)。生産手段は国有化します。

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source : 週刊文春 2022年4月21日号

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