ウクライナ危機が世界食料危機に|池上彰

池上彰のそこからですか!? 第522回

池上 彰
ニュース 社会 国際

 スーパーマーケットなどに買い物に行くたびに物価の上昇を実感するようになりました。パンが値上がり。カップ麺が値上がり。これからどんなものが値上がりするか、考えるだけでウンザリしてしまいますが、これもロシアがウクライナに侵攻したことと、それに対する経済制裁が理由です。

 まずはロシアによるウクライナ侵攻の直接的影響です。ウクライナが小麦の輸出大国であることを、今回の侵攻で知った人もいることでしょう。さらにロシアも小麦の輸出大国。両国の小麦輸出量は合わせて世界の3割を占めています。ウクライナの港がロシア軍によって封鎖されてしまったため、小麦が輸出できないでいます。

 一方、ロシアは小麦の輸出を停止しました。世界各国から経済制裁を受けているため、自国の食料を確保しようとしているのです。

 実は日本はロシアやウクライナから小麦をほとんど輸入していません。カナダ、アメリカ、オーストラリアから輸入しています。それなら大丈夫……とはいきませんね。物価は需要と供給のバランスで決まります。小麦に対する世界の需要が変わらなければ、供給量が減った分だけ、残りの小麦の価格が上昇します。

 日本の小麦の輸入は、国が一括管理しています。まとめて大量に購入するので、売り手に対して強い態度に出ることができ、それだけ低価格で安定的に輸入できる……はずでした。でも、供給が減れば、売る側が強気に出られます。日本政府は、これまでより高値で購入するしかありません。

 それでパンやカップ麺の値段が上がったのかと思うと、違うのですね。日本政府は、小麦をまとめて購入し、それに一部上乗せした金額で製粉業者に売り渡しています。上乗せされた価格分は、日本国内の小麦生産農家への補助金として使われます。製粉業者に売り渡される小麦の価格は、毎年4月と10月に改定されます。いま値上がりしているのは、この4月分の売り渡し価格の引き上げが理由です。

 でも、この値上がり分は、実は去年の夏、カナダやアメリカ、オーストラリアの天候不順で小麦の出来が悪く、生産量が減ったからです。ウクライナ侵攻の影響の分は、まだあまり反映されていないのです。次に反映されるのは、今年10月。これ以降、パンや菓子、うどん、ラーメンなどが続々値上がりするのは確実です。

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source : 週刊文春 2022年4月28日号

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