人間の本質は善である。だからこそ人類は危機を乗り越えてきた――。そう論じた本が世界中でベストセラーとなっている、歴史家のブレグマン氏。ロシアのウクライナ侵攻、そして人類の歴史と未来を池上彰と語り尽くす。
池上 “欧州発の新たな知性”と称されるブレグマンさんの著書『Humankind 希望の歴史』は、母国オランダで25万部のベストセラーとなり、世界46カ国で翻訳されたと聞いています。日本でもよく読まれていますよ。
ブレグマン コロナ禍に出版されましたから、希望を見出したい人々の気持ちも作用したんでしょう。
池上 「人間は善良なのか邪悪なのか」という普遍的な問いが本書のテーマです。
ブレグマン 「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」というのが、私の結論です。人間性についての肯定的な見方が正しいことを裏付けるために、数々の科学的な証拠を提供しました。
池上 歴史学や心理学、生物学など多方面からのアプローチで、「利己的で邪悪だ」とする人間観を否定しています。しかし、現在の世界はどうか。今回ブレグマンさんにお話を伺いたいと考えた大きな理由は、ロシアによるウクライナ侵攻をどう捉えているのか、お聞きしたかったからです。
ブレグマン 我々人間は非常に友好的な面を進化させていながら、なぜこれほど酷いことができるのか。私が住んでいるオランダの家から車で15時間の場所で大きな悲劇が起こっているとは、昔の悪夢が蘇ったような感覚に襲われます。
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source : 週刊文春 2022年5月5日・12日号