これのどこがヤマ場なのかと問えば、ベテラン政治記者も「劇末の決まり文句みたいなものだけど……今回はなしかもね」と声をひそめた。
立憲民主党が8日、岸田内閣と細田博之衆院議長に対して提出した不信任決議案だ。翌9日の採決に向け、「参院選をにらんだ今国会最終盤の与野党攻防は大きなヤマ場を迎えた」(共同通信)、「15日の会期末を控え、与野党の攻防はヤマ場を迎える」(時事通信)などと前口上は仰々しいが、さっぱり分からない。
だいいち両通信社とも「内閣不信任案、否決へ」「与党は否決方針」と見出しでうたっている。結果が見えた攻防劇のどこがヤマ場なのか。
ひょっとすると、自民党の福田達夫総務会長が「反対作用として衆院解散が起こりうる」と発言していたから、万が一に備えての布石かとも思ったが、否決翌日の10日朝刊には解散政局の緊迫化を伝える記述は見当たらない。
代わりに否決の後に噴出したのは「野党、広がる距離 不信任案 維新『猿芝居』■国民『政治空白』 立憲 対決構図作れず」(朝日)などと攻め手がコケた話ばかり。内閣不信任決議案を巡っては、立民、社民、共産三党と日本維新の会、国民民主二党で賛否が分かれたのだから仕方あるまいが。
ただし、ちゃっかりと「選挙直前 割れる野党 投開票まで1ヵ月 候補者調整進まず」(日経)との記事まで揃うのを見れば、紙面が出来レースのように思えてくる。
残る可能性は、朝日が社説で「議長不信任案 覆い隠せぬ資質の欠如」と糾弾したように、細田議長の「首」問題か。維新と国民民主党でさえ反対でなく退席にとどめたぐらいだから、もう一度ヤマ場が来るのかもしれないが、それも自民党の自滅であって野党の手柄とは到底思えない。
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source : 週刊文春 2022年6月23日号