この欄で何度か取り上げてきたテーマだから、読者は「またかよ」と思うだろう。しかし筆者だって「またかよ」と思っている。それほど東芝を巡る新聞報道は酷い。
経営再建策を募集していた同社が、名前こそ明らかにしなかったものの10件の提案があったと発表した。これを受けた6月3日付朝刊で、各紙は「提案したのはどうやらここらしい」と具体名を並べている。つまり各紙最大の関心は提案者が誰かということだ。
最終的な買い手はこれから絞り込まれる。だから今の段階でどの投資家が関心を持っているかなどは些末なことだ。それよりも東芝の目下最大の問題は、大量の同社株式を保有する「もの言う株主」と呼ばれるアクティビストの幹部を、6月下旬に開かれる株主総会で、「取締役にしてくれ」と東芝自身が提案していることだ。
株式会社とは、会社に資金を投じている株主の負託を受けた執行(経営)が成長させる組織である。執行の努力で株価が上昇したり、内部留保が厚みを増し、配当が増えれば株主の投資は成功ということになる。ここで取締役の役割は、なけなしのカネを出している株主の期待に執行がちゃんと応えているのか監督することにあるはずだが、大株主が監督役になったら考えの異なる他の株主の意向を無視して、自分たちの都合が良いように監督する恐れがある。
従って取締役は会社から独立した存在で、かつ全ての株主に対して公平な立場の人材であるべきだ。それなのに東芝は、自分たちに都合が良い監督をしそうなアクティビストを取締役にしてくれと言っているのである。
これがコーポレートガバナンス(企業統治)にとって由々しき問題であることをそれなりに指摘しているのは毎日だけ。読売と朝日も多少は触れているが、外資系ファンドが東芝を傘下に収めたら経済安全保障の観点から問題ではないかと、いわば「たられば」の話にむしろ熱心だ。
日経の3日付朝刊は、このいびつな取締役選任議案の問題に触れてもいない。東芝は新任取締役の選任議案を決めるにあたり、現任の取締役一人が猛反対したという内幕を3日に明らかにしたが、その意味をはっきり書かなければ読者はポカンだろう。
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source : 週刊文春 2022年6月16日号