ブルース・ウィリスが失語症のために俳優業を引退、と聞いて悲しかったのは、テレビ・ドラマ『こちらブルームーン探偵社』(85年〜)の頃からファンだったからだ。ここでのウィリスは『ダイ・ハード』(88年)でマシンガンを振り回す前で、腕っぷしはからきしだけど、とにかく口が達者で、ものすごい早口でマシンガンのように軽口を飛ばしまくる役だった。髪の毛もふさふさだったし。
『こちらブルームーン探偵社』のオープニングは、ロサンジェルスの風景のモンタージュ。ダウンタウンの夜景やハリウッドの映画館、そのなかでひときわ謎だったのは、モノアイ(単眼)型のサングラスをかけた金髪でグラマーで肉感的な唇の美女の姿だった。
そのサングラスが『怪獣大戦争』のX星人みたいなので強烈に印象に残っていたが、それから10年ほどして、生まれて初めてロサンジェルスに行った時、その現物を見た。ハリウッド大通りのビルのてっぺんのビルボード(巨大看板)に、あのX星人風の美女が描かれていたのだ。全身を見ると巨乳がデカすぎていかにも作り物っぽい。
Angelyne(アンジェリーン)
そのビルボードにはただ一言だけ、そう書かれていた。それが彼女の名前なのか? それ以外には電話番号があるだけ。
誰? 芸能人?
当時はまだインターネットがないので検索できない。さすがに電話する勇気はない。道行く人に尋ねても誰も知らない。
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source : 週刊文春 2022年6月30日号