世襲など今は昔。職業選択の自由が当たり前の現代で、それでも継ぐことを選んだ人々の覚悟を写す―。

撮影 田附 勝

継ぐ=アップデート|狂言方和泉流 野村裕基 

 

 たとえるなら、携帯電話の機種変更。

 狂言師を継ぐことについて尋ねると、野村裕基さんから返ってきた答えは機知に富んだものだった。

「声質や見た目が父に似ているとよく言われます。最近は喋り方や台詞の言い方も似てきているようです。今の修業段階では師を完璧に真似することが求められているので、継承という意味でも褒め言葉と受け止めています」

 その後に、冒頭の言葉が登場する。

「携帯電話は次世代へと進んでいます。新しい機種に変更をしながら、みなさん元々のデータや写真を入れ替えて使い続けるわけです。私たちの狂言も、根本は変えずに時代に即した形でアップデートしていくことが理想です」

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source : 週刊文春 2022年7月7日号