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ちょっと引いた視点で見れば、すべての仕事はつながりを持っていると感じます。|小池一子

新・家の履歴書 第790回

山内 宏泰

連載

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(こいけかづこ 1936年、東京都生まれ。クリエイティブ・ディレクター。武蔵野美術大学名誉教授。80年、「無印良品」企画・発売に携わる。83年、「佐賀町エキジビット・スペース」を創設・主宰。現在、この活動は「佐賀町アーカイブ」に続く。近著に『小池一子 はじまりの種をみつける』『美術/中間子 小池一子の現場』など。)

Photo by Taishi Hirokawa

 私はここにいるのに、頭の中はいつもここではない他所のところにある。それが小さい頃からの私の常です。

 二足どころか何足も草鞋を履いて、「ジャグリング」し続けてきました。だって最初は億劫に思えても、首を突っ込んであれこれやっていると、何事もどんどん面白くなっていくじゃないですか?

 ファッション分野での編集執筆に始まり、日本初のファッション展「現代衣服の源流」をプロデュース。パルコや無印良品のコンセプトづくりや商品企画に携わったかと思えば、西武美術館での展覧会キュレーションを続々と手がけた、クリエイティブ・ディレクターの小池一子さん。
 1936年生まれで、父は教育学者の矢川徳光、母は民子。5人姉妹の4番目だった。母方の祖父が東京・目白で小さい医院を営んでおり、幼少期はその敷地内で暮らした。

 自由学園のすぐ近くで、山手線の行き交う音がいつも聞こえていましたね。祖父母の一家と伯母夫婦、それにウチの一家がそれぞれの棟に分かれて住んでいました。夜になると敷物だけ抱えて、「今日はおばちゃんの家に泊まってくる」などと気ままに棟を行き来していました。生まれながらにバガボンド(放浪者)的な性向があったみたいです。

 やがて矢川家は、世田谷区新町に新しくできた同潤会駒沢分譲住宅へ居を移す。関東大震災後、勤労世帯に良き住空間を提供せんと、東京・神奈川の各地で展開された宅地開発の成果の一つだ。

 父は進歩的な考えの持ち主で、輸入もののカメラを手にほうぼうを撮り歩くような新しいもの好きでもありました。「新しい暮らし」を標榜する同潤会の考えにも、きっと深く共鳴したのでしょう。木造平屋建ての住宅はさして大きくもないけれど、庭が広くて子どもには嬉しい限りでした。どうやら住居の三倍の面積を庭に充てるよう、定められていたみたいです。

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source : 週刊文春 2022年7月21日号

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