アメリカ議会下院のペロシ議長が台湾を訪問したことに対し、中国が激怒。台湾を包囲する形で実弾を使っての軍事演習を実施するなど、台湾情勢がキナ臭くなっています。なぜこんなことが起きているのか、基礎から考えましょう。
まずはアメリカと中国の関係です。第二次世界大戦後、国際連合が発足したときの「中国」とは中華民国でした。しかし国共内戦を経て、中華民国が統治できているのは台湾だけに。大陸には中華人民共和国が成立しているのですから、中華民国が中国を代表しているというのには無理が出てきました。
アメリカは戦後、台湾と国交を結んでいましたが、やはり人口の多い大陸が経済面でも魅力的です。そこで1972年、当時のニクソン大統領が中国を訪問し、国交正常化に向けて話し合いを続けることで合意します。これにもとづき、実際に正式な国交が結ばれたのは、カーター大統領の時代の1979年でした。
これにより、アメリカは台湾と断交します。しかし、当時のアメリカの議会では「台湾を見捨てるべきではない」との声が強く、議会が、「台湾関係法」を成立させます。この法律は、「台湾人民の安全または社会、経済の制度に危害を与えるいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる合衆国の能力を維持」し、「大統領と議会」が「憲法の定める手続きに従い(中略)とるべき適切な行動」をすることを定めています。(政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所「日中関係資料集」より)
要は「アメリカは台湾を防衛するよ」という意味なのですが、表現は曖昧です。もし台湾が中国から軍事攻撃を受けたとき、アメリカは本当に台湾を守ってくれるのだろうか。これが台湾の人たちの懸念です。
そこでアメリカ議会を代表する形で下院のペロシ議長が、「アメリカは必ず台湾を守ります」と約束したというわけです。
これは中国にとって「台湾という国内問題にアメリカが口を挟む内政干渉だ」となります。しかも時期が悪かった。中国共産党はこの秋に党大会を開きます。党大会を前にして共産党の現役指導者が、引退した長老たちを交えて人事を話し合う大事な会議が河北省の避暑地「北戴河(ほくたいが)」で開かれます。
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source : 週刊文春 2022年9月1日号