人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
前編集長、新谷学氏から赤坂の小料理屋に誘われ、「文春で連載お願いします、エロで」と、矢継ぎ早に言われてから、ちょうど10年。連載は500回を超えた。
僕はその時、歯医者の待ち合い場所にも置いてあるようなメジャー誌故、誰が読んでも大丈夫な内容のエッセイの方がいいんじゃないかと思ったが、
「タイトルはこちらでも考えますが、何かいいのがあればまた、教えて下さい」
と、あくまでエロ一直線。
そりゃエロは得意分野だったけど、それを毎週やってちゃネタも尽きるだろう。
だから後日、僕が出したタイトル案は、エロとも取れるが程度の、ぼやかしたものだった。
それを聞いた新谷さんは、「いや、そうじゃなくて……」と、弱みを指摘した。
おっしゃる通りエロに気取りや気負いがあってはならないのだ。いるのは自虐と、その滑稽さのみ。
「も少し、考えてみます」
と、一度、電話を切った。
すると、あるヒントが浮んできた。
最終的に「それですよ! それでいきましょう!」と、新谷さんに絶賛され、決定したのが『人生エロエロ』。
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source : 週刊文春 2022年10月13日号