製薬大手・エーザイの内藤晴夫CEOは、9月28日、アルツハイマー病の新治療薬「レカネマブ」の最終的な臨床試験(第Ⅲ相)で、有効性が確認できたと発表した。“病の進行そのものを抑える”という画期的な新薬を徹底検証する。

 日本の認知症患者は約600万人で、そのうち7割弱、約400万人がアルツハイマー型と言われている。

「アルツハイマー病の薬といえば、これまでエーザイの『アリセプト』に代表される、脳の神経機能の伝達を補うものしかありませんでした。これはあくまで対症療法で、神経細胞が死んでいくのを止めることはできません。一方、レカネマブは、アルツハイマー病の引き金となるタンパク質『アミロイドβ』を脳内から取り除くことで進行に抑制をかける、画期的な薬なのです」(東京大学大学院神経病理学分野の岩坪威教授)

エーザイの内藤CEO

 治験は日米欧の早期のアルツハイマー病患者ら約1800人に対して実施された。2週に一度、18カ月間投与した結果、記憶など認知症の程度を評価するスコアにおいて、偽薬を投与したグループに比べ、悪化を27%抑えられた。

「1年半で認知機能が100低下するはずが、73に抑えられるということです。進行のスピードが顕著に落ちるとまでは言い難いですが、25%を越えれば臨床的な意義につながるとの見方もされてきたので、極めて重要な結果と言えるでしょう」(同前)

 レカネマブの第Ⅱ相試験結果によれば、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の段階で投与した場合、「日付を思い出せない」といった軽度認知症に至るまで2.53年、「家族の名前を忘れる」中等度に至るまで3.34年、進行を遅らせる可能性があるという。

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source : 週刊文春 2022年10月13日号