「心はつらいよ」を連載していた東畑開人心理士が初登場! 合理性が重視され、「悪」が排除されゆく現代社会で、「話を聞く/聞かれる」ことがもつ力とは。2人の聞くスペシャリスト!?が辿り着いた結論をご覧あれ。
(とうはたかいと 臨床心理士。1983年生まれ。東京都出身。専門は臨床心理学、精神分析、医療人類学。白金高輪カウンセリングルーム主宰。2019年『居るのはつらいよ』で第十九回大佛次郎論壇賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020を受賞。著書に『心はどこへ消えた?』など多数。)
阿川 この度『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)という本を上梓されたそうで。東畑先生は心のケアやカウンセリングがご専門と伺っておりますが、今回はなぜこのテーマで? もしかして、私への挑戦状?(笑)
東畑 いえいえ、違いますよ!(笑) 書く前に『聞く力』を読み、どうしてこんなに面白い本が書けるんだろう、と思っていましたから。
阿川 そんなに慌てなくても(笑)。私もご著書を拝読して、面白い本だなと思いましたよ。私が『聞く力』を出したあと、看護師さん、弁護士さん、営業マンとか様々なところから「私たちの仕事は『聞く』ことに悩んでいる人が多いので」って講演の依頼をたくさん頂いたんです。「聞く」ということに悩んでいる人はこんなに多いのかと驚いちゃった。
東畑 同じです。朝日新聞で「社会季評」を連載しているんですが、昨年末に読者向けのオンラインイベントをしたんです。そこで娘の話が聞けないという人や、部下の話が聞けないという人など、様々な質問をもらいました。それまで僕は、聞く“技術”的なものは良くないな、と思っていたんですよ。
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source : 週刊文春 2022年10月27日号