その日に起きた出来事や掴んだ情報を翌日の紙面で伝える。新聞の朝刊とはそんな代物だ。作っている報道機関は紙面化するにあたって優先順位を考え、重要と思った話を一面に載せたり、記事を大きくしたりする。読者はそのレイアウトを見て、事の軽重を判断することになる。
10月20日は伝えなければならない話がたくさんあった。円相場が対ドルで下落、一時1ドル=150円台と32年ぶりの水準になった。英国のトラス首相が就任後わずか44日で辞意を表明した。旧統一教会の友好団体が複数の自民国会議員に推薦確認書への署名を求めていたことが発覚した。品質不正問題で、三菱電機が不正案件は197件にのぼるという調査結果をまとめた……。これにどう優先順位をつけるか。
21日付朝刊を見ると、各紙とも円安とトラス首相辞意表明は一面。朝日と毎日は旧統一教会問題も一面に載せた。朝日は本件を一面のほか三面、社説、社会面でも大展開したが、これは前日の20日付朝刊で「推薦確認書」の存在をスクープしたからだ。
各紙の価値判断を見比べていて、不思議に思ったのが読売の紙面。トラス首相の辞意表明は日本時間の20日夜だった。現地メディアですら直前まで知らなかった話を大ニュースと判断し、短時間で一面トップに置いたのは評価できよう。朝、毎、日経はトップに比べてレイアウトが容易な二番手、三番手の記事に留めたから、なおさらである。
しかし、気になったのは同日一面のもう一つの記事だ。「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の記事を産経が一面で扱っているのは違和感がないが、読売がそれを上回る勢いで、一面、二面、三面と大展開しているのには驚いた。なぜなのか。
そう思い、この会議の構成員を調べてみて合点がいった。10人のメンバーの中には新聞出身者が3人いるが、朝日と日経出身者がOBなのに対し、読売は現職のグループ本社社長が名を連ねているのだ。
派手な紙面作りは最高人事権者に対する忖度ではないのか。一体誰のために新聞を作っているのか。物価高の中でも高い購読料を払って読んでいる身としては、「読者目線を大事にする」などという主張が虚しく聞こえる。
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source : 週刊文春 2022年11月03日号