浮気者の山蔭右京は、召使いに身替りを命じて座禅を組ませ、妻に黙ってこっそり屋敷を抜け出した。若い遊女との逢瀬を楽しんだ右京が揚々と帰宅すると――。
歌舞伎の人気演目「身替座禅」は、15代目・片岡仁左衛門(78)が長年に渡って何度も出演した名作だ。昨年末にも仁左衛門扮する右京が京都・南座を沸かせた。
声よし、顔よし、姿よしの二枚目役者として、堂々と大名跡を受け継ぐ仁左衛門。7年前には人間国宝の称を贈られた彼が今、人知れず夢中になる“演目”がある。
ウォーキング中の姿でさえ凜と美しい男の前に、親子ほど年の離れた小柄な女性が現れる。妻に内緒か、男は人けの少ない神社の境内へ歩を進めるのだ。それは、家に身替りを置いているかの如く、堂々たる立ち居である。やがて2人は静かに体を寄せ合うのだった。
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source : 週刊文春 2022年11月10日号