選挙を所管する寺田稔総務相(64)が、昨年の衆院選(10月31日投開票)を巡り、「選挙運動費用収支報告書」に自らが選挙費用を支出していた旨を記載していながら、実際には、自身とは異なる第三者の口座から一部を支出していたことが「週刊文春」の取材でわかった。公職選挙法違反(虚偽記載)の疑いがある。
寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚である総務相に起用された。
「週刊文春」は10月6日発売号で、慶子氏が代表の政治団体「以正会」の人件費を巡る“脱税疑惑”を報じた。10月13日発売号では、寺田氏の資産公開法違反(寺田氏は後に資産報告などを訂正)を報道。10月20日発売号では、大臣秘書官・迫田誠氏への取材音声などを基に、秘書らに対する報酬の“上乗せ金”を「以正会」経由で支払っていたことは、源泉徴収を避ける目的があった旨を指摘した(寺田氏は疑惑を否定)。
さらに、10月27日発売号では、関係政治団体の「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者とし、収支報告を行っていた問題を報道。11月2日発売号では、同後援会が「寺田稔」宛の領収書を受領しており、実質的に寺田事務所と一体となって運営されていた疑いを報じた。11月10日発売号では、領収書の宛名欄の筆跡が酷似しており、寺田氏側で記入していた疑いなどを報じている。
今回、新たに発覚したのは、寺田氏の選挙費用に関する疑惑だ。
「寺田氏の地元は首相と同じ広島。池田行彦氏の死去に伴う2004年の補選で、広島5区から出馬し、初当選しました。ところが、2009年の衆院選では選挙区で落選し、比例での復活もならなかった。2012年の衆院選で国政に復帰し、6回の当選を重ねていますが、盤石の強さを誇っているわけではありません」(政治部デスク)
昨年の衆院選について、寺田氏は当選後、広島県選挙管理委員会に選挙運動費用収支報告書を提出している。選挙運動費用収支報告書とは、候補者本人が集めた収入とそこから使った支出を記載するものだ。収入については、自己資金のほか、政党支部や後援会など第三者からの寄附などがあれば、その旨を記載することになる。
寺田氏の選挙運動費用収支報告書によれば、「収入の部」欄には、自己資金300万円と、寺田氏が代表の政治団体「自由民主党広島県第五選挙区支部」による1200万円の寄附が記載されている。今回の場合、選挙費用はこの1500万円のうちから支出しなければならない。一方で、「支出の部」欄には、寺田氏が支出したとする会場使用代や有料道路代、弁当代など様々な選挙費用が記載されていた。
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source : 週刊文春 2022年11月24日号