×月×日

 シャネルの服を初めて着たとき、漠然と「女性であることに一度傷ついたことのある人」が作った服だと思った。今年、創設者のガブリエル・シャネルの展覧会で彼女が身につけていたクロスのアクセサリーを見た時、それは確信めいたものに変わった。なぜかというと、私がお守りとして身につけているネックレスに、とてつもなく似ていたから。

 私自身、女性であることに窮屈さを感じ、自分の性をひどく呪っていた時期があった。いわゆる男性的な顔立ち、体型、性格でありながら、女性であることから逃れられない。自分に向けられる性的で理不尽な視線、自分よりも力が強く、いざという時に抗えないという身体的恐怖、男性優位の社会構造。それらは世界の一部分に過ぎなくても、私の精神を蝕んだ。だからこそ私は早急に、自分が女性に生まれついたことを祝福しなければいけなかった。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2022年12月29日号