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『チ。―地球の運動について―』(作・画:魚豊 小学館 全8巻 各650円+税)の舞台は15世紀のヨーロッパ。これまで一千数百年もの間、地球が中心で全ての天体はその周りを複雑に回っているとする「天動説」が真理だとされてきた。
それに対し、地球が自らの軸を回る“自転”と、地球が太陽を軸として回る“公転”をしているとする「地動説」を研究する者たちが現れる。今となっては常識であるこの地動説は異端思想とされ、拷問や生きたまま火に焼かれるなどおぞましい弾圧を受けていた。けれど命を懸けてでも、地動説という真理を追究し、天動説という既存の秩序を覆す、名もなき人々が繋いだ歴史が描かれている。
当時、この世は醜く貪欲で汚れていて、天国だけが清く美しいと信じられていた。天動説を信じる人物はこう語っている。地球が宇宙の中心で、中心とはすなわち一番“底辺”ということ。見上げる夜空がいつも綺麗なのは、この穢れた大地から見上げているからであり、天の世界は、下等な地球如きとは調和しない。希望は天国にしかない、と。
でも、もしも地球が“動いている”なら。
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source : 週刊文春 2023年7月13日号