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私は言葉が好きだ。『言語の本質』(今井むつみ、秋田喜美 中公新書 960円+税)では、なぜ人間だけが言語を習得し扱うのか、赤ちゃんの頃から膨大で複雑なシステムである言語をどのようにして習得していくのかなど、様々な実験によって導き出されている。
言語という領域にとらわれず、この世界の仕組みや、自分の生き方の本質を突かれている気がした。今年の初め、私が出した推論ともいうべき仮説は「悟りを開いたら終わり」である。この仮説は私自身に限定する。私が以前悟りを開いたことはこの連載で明らかにしたが、まず悟りという言語が表す体験そのものが私の「推論」から成り立っているものである。こんな感じのことを指すのかも、と自分の推論と合致した体験をもとに話す。私にとっての悟りとは「停止」だった。人は停止すればたちまち「衰退」していく。なぜなら時間は流れているので、時間から見れば自分は後退の一途を辿っているから。
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source : 週刊文春 2023年9月7日号