私の古くからの友人にそれはそれは美しい人がいた。類稀なる外見とは裏腹にその心はとても臆病で繊細で穏やかだったものだから、そもそも人の興味を引くことそのものや、幅広い年齢層の異性から向けられる狂信的なまでの妄執、身に覚えのない噂や勝手な嫉妬に必要以上に苦しめられていたようだった。健康と引き換えに体重を大幅に増やすことでその子はやっと自由になり、持って生まれたギフトというのは、必ずしもその人を幸せにするものではないらしいと、その時私は知った。『ダイヤモンドの功罪』は、そんな望んでもいないのに与えられてしまった規格外の才能によって辺りが焼け野原にされる様をねっとりとじっとりと描いている。
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source : 週刊文春 2023年7月20日号