「維新の三傑」の曾孫との出会いは“突破口”となるのか。

 

【前回まで】西南戦争で薩軍三番大隊長を務めた永山弥一郎。西郷側近ともいえるポジションにいながら、その名前が知られていない理由を小川原正道教授は「西郷との距離感にある」と指摘した。その小川原氏が「薩摩人のことを調べるなら……」と筆者に紹介したのは大久保利通の曾孫――本連載は謎多き男の生涯を掘り起こす「同時進行歴史ノンフィクション」である。

【2023年2月 都内某所】

 西郷隆盛と大久保利通。

 その家で彼らの名前を口にするとき、歴史上の人物として「西郷が……」「大久保が……」と“呼び捨て”することに妙な居心地の悪さを覚えた。気が付くと私は「西郷さん」「大久保さん」と呼んでいて、ついには「山県(有朋)さん」と言い出すに至り、自分でちょっと笑ってしまった。

「歴史」が地続きである場所とは、そういう磁力を持つものなのかもしれない。

 この日、私がいたのは大久保利通の曾孫の家である。

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source : 週刊文春 2023年9月7日号