「安全装置を取り外しました!」

 そんな特撮ドラマやロボットアニメさながらの台詞が『魔改造の夜』で飛び出した。この番組は、身の回りにあるおもちゃや家電製品を改造し、「実益と生産性を一切無視」したバカバカしくてくだらない競技を真剣に行っている。元々はBSプレミアムで不定期に放送されていたが、4月から地上波で月1回最終木曜日にレギュラー化された。

 挑戦するのは日本を代表する企業のエンジニアたち。そんな中、初めて高専生として「N岡高専」こと長岡高専が参戦した。総合リーダーを務める5年生はこの日が卒業式だというが「夜会のほうが大事」と参加。コロナで不完全燃焼だったロボコンの雪辱を果たしたいのだという。対戦するのは「H置電機」こと日置電機と、「N社」ことNEC。彼らは7月に放送された「パンダちゃん大玉転がし」に続き、洗濯物を干したままロープをわたる「洗濯物干し25mロープ走」に挑戦した。ついにおもちゃや家電ですらなく、日用品を魔改造することになったのだ。

(写真は8/31放送分より)

 N岡高専が魔改造した物干し「ジェットコプター」が“御披露目”されると、N社の総合リーダーが「クソ、やられた」と唇を噛んだ。プロペラが動力なのは共通するが、スタートダッシュが課題となる。それにN岡高専はジェット噴射を採用していたのだ。おそらく、N社もそれを検討し、断念したのだろう。

 いよいよ1回目の挑戦。しかし、プロペラは回っているが動き出さない。フライング防止のストッパーを解除するモーターが作動しなかったことが原因のようだ。他の2チームも揃って途中で止まってしまい全チームが「記録なし」という事態に。難しさを物語る。

 10分間の調整時間が与えられ、2回目の試技となるのがルール。ここでN岡高専の総合リーダーが決断を下し発したのが冒頭の言葉だ。ストッパーを外したのだ。果たして、機体は見事にジェット噴射し、駆け抜けた。抱き合い喜びを爆発させるN岡高専。その光景は青春映画のようだった。

「ほぼほぼテレビで泣いたことなんかないけどね」

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source : 週刊文春 2023年9月21日号