『相棒』をはじめて観た時に「この水谷豊は私の知ってる水谷豊じゃない」と思って『相棒』になじめず今まで来てしまった。私にとって水谷豊は『傷だらけの天使』の、無垢でやんちゃでアブナイ青年……って、それもう半世紀前かよ! そりゃ水谷豊も変わるわ。

 若い俳優が年齢を重ねて老けていくのは当然であって、オードリー・ヘップバーンが「シワは私が手に入れたものよ」って言ったとか言わないとか、とにかく「いい年のとりかた」をすることが俳優には必要であろう。

 で、先日、盆休みにぼんやりテレビを見るしかないという時間を過ごしている時に強烈に目をひきつけられた番組があった。『シッコウ!!~犬と私と執行官~』。

 差し押さえや没収の強制執行をする「執行官」のドラマ。差し押さえにまつわる人間模様を面白おかしく描く……という想像通りのドラマで、はっきりいって深みも何もないんですが、ここに出てくる「犬が苦手の新米(だけど若くない)執行官・小原樹」が織田裕二。この織田裕二の演技を見てたら「水谷豊が『相棒』の杉下右京になった」ように、織田裕二はこれからこの『シッコウ!!』の小原になるんじゃないのかと思ったからです。

織田裕二 ©文藝春秋

 織田裕二は加齢によりルックスが悪くなったということはない。競輪場で見かけるおっちゃん客のように、顔がなめし革的に茶色くテカテカと艶をおびてきている、というところを含めて、いい感じに年をとっていると思う。そしてこの『シッコウ!!』での織田さんの「おじさん演技」「抑えたギャグ演技」「ホロリとさせる演技」が、とても印象的なのです。一種の型芝居というか、あるいは「キャラクター化」しているとでも言えばいいのか。杉下右京もそういえば型芝居(ある種、歌舞伎っぽいとでもいうか)である。今どきのテレビドラマの中にあって、違和感と安心感が同居したような、不思議と目をくぎ付けにさせる演技。ありそうで案外ないんだ。

「湾岸署で走り回ってた織田裕二」が、別の生き物に変態したかのような静かな衝撃を感じてしまいました。トレンディ俳優(死語ですが)の変化の仕方としては、けっこう珍しいような気もする。誰もが杉下右京になれるわけじゃない、でも織田裕二はそういうものになれるのかもしれない。

 あくまでこの番組だけの役作りなのかもしれないが、……でもこの先、織田さんこの路線で行くといいと思うなあ。

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source : 週刊文春 2023年9月14日号