「週刊文春」の記者から初めて連絡を受けたのは、2023年の7月13日のことだった。その電話は直接、俺のところにきたわけではなかった。自宅の隣に住んでいた知人の家に記者が来て、名刺を置いていった、と連絡があってね。俺は文春にあの話をするべきかどうか、しばらく考えていた。
後に「木原事件」と呼ばれることになる記事が、同誌に掲載されたのはその1週間ほど前のことだった。当時、すでに警察官を退職して1年が過ぎていた俺は、ときおり市役所の人材センターでアルバイトのような仕事をしていた。お金には困っていないから、旅行をしたりパチンコに行ったり、しばらくのんびりしようという生活を送っていたんだ。
そんななかで、刑事として取調官をしていた頃の記憶も、だんだんと過去のものになろうとしていた。ところが、文春に初めて出た「木原事件」の記事は、そんな自分にとっても驚くべきものだった。というのも、記事は警察内部の誰かがリークをしなければ、決して書くことのできないものだったからだ。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル