師走の寒空の下、私は閑静な住宅街で、ある人物を待っていた。どうしても伝えたいことがあったから。不審者と思われたか、交番のお巡りさんが近づいてきた。にっこり笑顔で答える。
「ある方にお会いしたくてお待ちしているだけです」
名乗って名刺を渡せば、お巡りさんもにっこりと、
「記者さんですか。念のためお聞きしますが、どなたをお待ちに?」
「お巡りさんならお分かりになっているでしょ?」
そう返すと苦笑い。そりゃそうだ。地元の交番の警察官なら、記者が誰を待っているかはすぐわかる。
佐川宣寿氏。6年前、財務省の理財局長として森友事件の矢面に立ち、「交渉記録は廃棄しました」と虚偽答弁を繰り返した人。その陰で公文書の改ざんを主導した人。後に、国税庁長官に栄進したが、近畿財務局で改ざんを迫られた赤木俊夫さんが命を絶った2日後に事実上更迭された。私はその佐川氏を自宅のそばで待っていた。
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source : 週刊文春 2024年1月4日・11日号