思い出の味はいつだって、懐かしいあの頃の記憶を連れてきてくれる。祖父の作った甘いすき焼き、先輩の家に行けば必ず出してくれたちゃんぽん麺、友人考案の簡易版ホットチョコレート。たとえもう二度と会うことのできないその人たちの声や顔を思い出すのに、ずいぶん時間がかかるようになったとしても。『米蔵夫婦のレシピ帳』を読んでいるとあまりの羨ましさに胸が張り裂けそうになる。なんで私は、レシピを聞いておかなかったんだろうね。
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source : 週刊文春 2024年3月28日号