初めて痴漢されたのはたしか小学生。それから電車に乗るときは常に臨戦態勢だ。耳鼻科検診に来た医者の距離感に違和感を抱いていたら保健室の先生が顔を真っ青にして飛んできたことがあった。未だに男性の医者がちょっと怖い。条件の良い物件が1階で諦めたこともあった。でも男友達はその理由が最後までよく分からないみたいだった。いいよな、気にしないで生きていける性別の人は。その場に女性が自分ひとりだけでビクビクしたことも、大好きな趣味を「どうせ彼氏の影響でしょ?」って鼻で笑われたこともないんだろうなあ。いいなあ……いやちょっと待て、なんで?『ジーンブライド』を読んでいるとなんとなくモヤモヤしたままスルーしていたあれやこれやへの感情が新鮮に蘇ってくる。私たちはもっと怒っていいんだと鼓舞してくれる。これは怒りだ。不平等への、不自由への燃え尽きることのない新鮮な怒り。クソがよ。

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source : 週刊文春 2024年3月14日号