5人の死者を出し、150人以上の入院患者を出している小林製薬の“猛毒”紅麹。「ブルーレット」「ナイシトール」「熱さまシート」などCMで見ない日はない有名企業の失敗。その陰には、創業家一族のドンの存在があった。
▶︎小林一族で株33%、紅麹協議開始直後にインサイダー疑惑
▶︎84歳の独裁会長 フィギュアで全日本6位「社員は階段使え」
▶︎消臭元で17億円豪邸、マンション6部屋、競走馬32頭
▶︎死者5人に ライバル社幹部「広告が巧いだけで開発力なし」
▶︎ケシミン成分不足、のどぬーるヨウ素過多「回収の常習犯」
古くから「薬の街」として知られる大阪市中央区の道修町。田辺製薬や武田薬品工業をはじめ、大小様々な製薬会社がオフィスを構えるこの街の一角に、小林製薬も本社を構えている。
76年から04年まで社長を務め、現在も代表取締役会長を務める小林一雅氏(84)は、今から25年程前のとある日、旧社屋のエレベーターの中で、1人の社員をジロッと見つめていた。一雅氏は社員が降車後、秘書に対してこんな指示を出したという。
「今の奴は、どこのどいつだ。社員は階段使えって言っておけ」
当時を知る元社員が振り返る。
「会長に好かれればトントン拍子で出世できるが、嫌われたら一生出世はできません。だから会長と接触するのは社員にとってギャンブルみたいなものだったんです」
一方、元幹部社員はこう声を潜める。
「あの会社には昔から“隠蔽体質”があるんです。一雅さんは恐ろしく、些細なミスでも怒られる。『一雅さんにバレたらどうしよう』とみんなビクビクしています。今回の問題も会長にバレずに何とかごまかせないかと悩んでいる内に公表が遅くなってしまったのではないか」
傘寿を過ぎて今なお絶対権力を有する一雅氏とは何者なのか。そして、なぜ小林製薬は、この会長のもとで“猛毒”を撒き散らすに至ったのか。
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source : 週刊文春 2024年4月11日号