出版関係の知人から聞いた話である。近年、メディアに出る歴史学者が増えたため、歴史作家が仕事を奪われる事態になって困っているのだとか。言われてみれば、思い当たる。僕が少年時代に愛読していた『歴史読本』や『歴史と旅』などの歴史雑誌に文章を寄せていたのは、ほとんどが歴史作家で、大学に職を得ているような学者の名前はごくわずかだった。それが、最近の歴史ムックに名が載るのは、ほとんどが研究者である。かつて学者は「文章が小難しい」「話がつまらない」と言われてメディアから敬遠されてきたことを思えば、これは隔世の感がある。

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source : 週刊文春 2024年5月23日号